「シュラーさん」
テレスに話しかけられて、シュラーは人懐っこい笑顔を浮かべてこちらを見た。
「シュラーさんはいつもそうですね。わたしには笑顔しか見せてくださらない。
戦場で泣いていたという話、聞きました」
指摘されると、ぷうと頬をふくらませる彼。
「誰に聞いたのさー。大体予想はつくけど」
テレスは口だけ笑って、首を振り、明確にはしなかった。
「これからどうするんです?」
しばらくして、空を見上げながら、二人は話し込んでいた。
「ボクはね…しばらく、お墓に通うつもりなんだ。
レラスくんはもちろん、ボクの不注意で助けられなかった人がいっぱいいる」
するとテレスはシュラーを変なものでも見るかのように見た。
視線に耐えられず、シュラーは問う。
「なに?」
「昔の偉人の言葉を借りますけど。
自惚れるな、ひとりの力でなんとかなるものではない。ですよ」
ぱちくりとする相手に、テレスはお構い無しにたちあがる。
「でもいいです。
シュラーさんがお墓参りに明け暮れるなら、飛翔亭もお任せしちゃいます。
そろそろわたしも戦わなくてはいけないって思っていましたから」
びっくり宣言をすると、テレスは心から微笑んで見せた。
「テレスは強いね」
「いえ。わたしはたくさんのひとを守れなかったから。それだけです」