「皆のように案を出すのは苦手だが…」
金属鎧を着込んだ、黒髪の男が静かに低音を出した。
自分の声が場に届いたのを確認すると、
「初にお目にかかる」
軽く会釈をして――
「俺は、エリアス・サパレイト。ハイラント出身、戦闘隊に所属している。
相棒のグヌタス・ディーエストという者もいるが、別行動中だ」
極めて簡単に自己紹介をした。
なにを言うのかと言う期待の視線が多い中、
エリアスは若干居心地悪そうに口を開く。
「…俺は、作戦を考えるのは得意ではないし、実行する器用さもない。
だから今回は、囮役を引き受けたい。
今は人数を減らす方法を考えているのだよな?
なんとか…例えばグヌタスの技で煙幕を張り、俺などが物音を立てれば
大人数がいて、攻めてくると警戒させられないだろうか。
そうしたらこっちに注意が向くから、その隙に…とか。
向こうも、囮の可能性は考えるだろうが、
予防策は張らなくてはならないし」
話しながら、どんどん眉間に皺が寄っていく。
考えるのが苦手という話は、謙遜ではないようだ。
最後に、この話は別にしても、
作戦上囮役が必要になら引き受ける、と付け足した。
PR